節税とキャッシュアウトの関係
節税対策というのは、ほぼ全ての場合においてキャッシュアウトが伴います。
キャッシュアウトせずに経費だけ計上できるというような、
魔法のような節税対策はありません。
したがいまして、節税対策を行う場合には、
長期的な資金繰りを考慮に入れて計画を立てる必要があります。
節税対策と内部留保
例えば、利益が1,000円で法人税率が35%だったとします。
この場合、支払わなければいけない法人税と手元に残るキャッシュを
節税対策をした場合と、節税対策をしなかった場合で見てみましょう。
①なにも節税対策をしない場合
全く節税対策をしなかった場合です。
利益1,000円×35%=法人税350円
利益1,000円-法人税350円=手元に残るキャッシュ650円
②節税対策として経費を1,000円分計上した場合
一方で、節税対策として1,000円の経費を使った場合です。
(利益1,000円-経費1,000円)×35%=法人税0円
利益1,000円-(経費1,000円+法人税0円)=手元に残るキャッシュ0円
このように、節税対策を行って法人税をゼロにしたのは良いの
ですが、手元に残るキャッシュもゼロになってしまいます。
ここまで経費を使ってしまうと、資金の内部留保が全くできない為に、
翌期以降に会社の業績が悪化した場合や、
翌期以降に設備投資を考えている場合には
非常に困ったことになってしまいます。
基本的にキャッシュアウトというのは、
会社の内部留保を考える上では少ない方が良いのです。
長期平準生命保険で節税を行う場合に気を付けること
上記の例はキャッシュアウトした全額が経費である場合でした。
2019年に大幅な税制改正があり、多くの生命保険の節税性が失われましたが、
現在でも、節税効果のある保険として話題に上がる「長期平準生命保険」という
法人保険があります。
「長期平準生命保険」を利用した節税対策の場合、1/2が経費になります。
残る1/2は「保険積立金」という資産として計上することになりますので、
状況によっては、資金繰りがさらに悪化することになります。
③節税対策として長期平準生命保険に1,000円分加入した場合
上記の例(利益が1,000円、法人税率が35%)で、
節税のため「長期平準生命保険」に1,000円分加入した場合の
資金繰りを具体的に見てみましょう。
{利益1,000円-(生命保険料1,000円×1/2)}×35%=法人税175円
利益1,000円-(生命保険料1,000円+法人税175円)=手元に残るキャッシュ▲175円
このように、利益金額1,000円に相当する生命保険に加入してしまったため、
キャッシュフローがマイナスになってしまいました。
しかも、長期平準生命保険は数十年の長期にわたって保険料を
支払い続けなければいけませんので、資金繰りの悪化は深刻です。
節税対策として長期平準生命保険に加入する場合には、
加入金額はよく検討すべきです。
長期的経営を見越した節税対策を
利益が1,000円、法人税率が35%の例でご説明しました通り、
納税する法人税額だけを見れば、
何も節税対策をしない場合が最も納税金額が大きいです。
(納税する法人税額)
①何も節税対策をしない場合・・・350円
③節税対策として長期平準生命保険に1,000円分加入した場合・・・175円
②節税対策として経費を1,000円分計上した場合・・・0円
しかし、残るキャッシュフローの金額から見ると以下のようになります。
(手元に残るキャッシュ)
①何も節税対策をしない場合・・・650円
②節税対策として経費を1,000円分計上した場合・・・0円
③節税対策として長期平準生命保険に1,000円分加入した場合・・・▲175円
もちろん、長期平準生命保険は、解約時にまとまった金額の解約返戻金を
受け取ることができますので、長々期的に考えればそこまでのキャッシュフローの差は
ないと思います。
しかし、事業年度ごとの資金繰りが見通せてこその会社経営です。
利益が出ているからといって無理な節税対策に走らずに、
会社の内部留保を高めることも長期的な会社経営のためには
重要なことになります。
節税対策は、場当たり的な利益をもとに考えるのではなく、
長期的な資金繰りを考えて行っていきましょう。
会社を長期的に経営するにあたって、
有益な節税対策を解説しています。
「節税対策と決算賞与~上手な決算賞与は節税と士気向上の一挙両得」
是非こちらもご参考ください。