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所得税

個人事業主が知っておきたい法人化のメリット・デメリットを詳しく解説

2014年11月13日

法人化による4つのメリット

現在、個人事業主として事業を行っている方が、
法人化した場合には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

『信用』

取引先が上場会社等の場合、個人事業主では、取引してもらえない場合があります。

同様に、インターネットショッピングモールへの出店も
個人事業主では困難な場合があります。

このような場合には、それらの会社と取引を行えるように、
現在行っている個人事業を法人化する必要があります。

また、求人募集の際にも、法人の方が信用度が高いと思われる傾向があります。

『有限責任』

個人事業主の場合、債務はすべて返済しないといけません。

一方、株式会社や合同会社の場合、株主は出資の範囲内で
責任を負うという有限責任が採用されています。

有限責任とは、会社の債務はあくまで会社の債務ですので、
その債務を会社の株主が返済する必要は無いということです。

株主は、会社設立時または増資時に出資した金額以上に
債務を負うことはありません。

『青色欠損金』

個人事業主の場合、青色欠損金は3年間繰越して、
その後の利益と相殺することができます。

一方、法人の場合、青色欠損金は9年間繰越すことが可能です。

※青色欠損金とは、ある事業年度に損失が出た場合、
その後の事業年度の利益と相殺できるという制度です。

この損失を繰越せる期間が、個人と法人で異なるのです。

もちろん、繰越せる期間が長い方が有利です。

『税金』

個人事業主と法人では、税金の計算方法が全く異なるため、
収入金額にもよりますが節税することが可能となります。

法人化の3つのデメリット

『費用』

法人の設立や維持に費用がかかります。

会社の設立費用は、株式会社であれば約25万円、
合同会社であれば約9万円、くらいです。

また、個人事業主の場合、利益が出ていなければ税金がかかりません。

一方、法人の場合、利益が出ていなくても年額7万円の税金がかかります。

『経理』

個人事業主の場合、白色申告であれば簡単な会計帳簿を付ければ
良いことになっています。

一方、法人の場合、複式簿記の原則に従って
会計帳簿を付けなければなりません。

『社会保険』

個人事業主の場合、従業員が4人以下であれば社会保険への加入は任意です。

一方、法人の場合、社長一人の法人であっても社会保険に加入しなければなりません。

現在、年金の支給開始年齢は65歳ですが、
将来的に68歳や70歳まで引き上げられる可能性が高くなっています。

高額な厚生年金保険料(2014年11月現在:会社と給料の受給者の
負担分を合わせて、給料の17.47%が保険料)を支払っても、
将来的にその年金を何年間受給できるのか考えると、
個人事業主が加入する国民年金でも十分かなと、個人的には思います。

あとは、国民年金基金に加入する等、
個々の自助努力で老後に備えた方が賢い方法かもしれません。

※ちなみに、先ほどの厚生年金保険料17.47%に、
一般的な中小企業が加入する全国健保協会の健康保険料率
(2014年11月現在[東京都]:会社と給料の受給者の負担分を合わせて、
給料の11.69%が保険料)を加えると29.16%の保険料となり、
かなり高額の社会保険料の負担となります。

一人事業の法人化と税金

個人事業主として、奥様やお子様と一緒に事業を行っている場合であれば、
その奥様やお子様に青色事業専従者給与という給料を支給することができます。

結果として、所得の分散効果で、家族全体としての税金は少なくなります。

しかし、一人で個人事業を行っている場合、
家族に青色事業専従者給与を支払うということができません。

事業の所得は、全て個人事業主本人の所得として課税されますので、
結果として税金が多くなってしまいます。

このような場合には、個人事業主の所得が900万円を超えた時点で
法人化を考えた方がいいです。

理由は簡単で、所得税よりも法人税の方が低くなるためです。

個人の場合、所得が900万円を超えた時点で、
所得税と住民税を合わせた税金の負担率が43.69%となっています。

※2014年11月現在(以下同様)

法人の場合は、最も税率が高い800万円超の法定実効税率でも
35.64%となっています。

「所得税43.69%>法人税35.64%」
もちろん税率が低い方が有利なので法人税の方
が有利となります。

一方、個人事業主の所得が900万円以下の場合、
所得税と住民税を合わせた税金の負担率は33.48%となります。

これだと、法人の最も高い800万円超の法定実効税率35.64%と比べて
所得税の方が低くなっています。

「所得税33.48%<法人税35.64%」
この場合には所得税の方が有利になりますので、
個人事業主のままでいた方が良いということに成ります。

法人化した場合の役員報酬の設定金額でも税額は大きく変わりますが、
ザックリと、個人事業主で1000万円を超える所得がある人は
法人化を考えた方がいいでしょう。

あとは、上の「法人化のデメリット3つ(社会保険)」で書きましたように、
社会保険の加入による保険料の負担増をどのように考えるか、
という問題に尽きると思います。

二人以上の事業の法人化と税金

一人事業の法人化のところで既に書きましたが、
奥様やお子様と一緒に事業を行っている場合であれば、
その奥様やお子様に青色事業専従者給与という給料を支給することが
できるため、所得の分散効果で、家族全体の税金が少なくなります。

このような二人以上の事業の場合、
個人事業主であっても、家族に青色事業専従者給与を支払う
ことにより、家族全体の税金が少なくなるため、
税金に限って言えば、法人化するメリットは薄まると考えていいでしょう。

したがって、二人以上の事業の場合、一人事業の
場合よりも所得が多くないと、法人化による節税
効果は期待できないということになります。

一方で、青色事業専従者給与を家族に支払うこと
ができるとはいえ、無制限に認められているわけ
ではありません。

あくまで、その親族の働きに見合った部分が給料と
して認められるだけですので、青色事業専従者給与
の金額には限度があります。

個人事業主の奥様が事業を手伝っていて、年額360万円
(月給30万円)の青色事業専従者給与を支払っている
場合、個人事業主本人の所得1,000万円と合わせて、
1,360万円の所得になれば、法人化を考えた方がいい
でしょう。

これに、さらにお子様が加わった場合、お子様の
青色事業専従者給与も加算した所得で、法人化の
有利不利を検討します。

このように、二人以上の事業の法人化は、個人事業主
本人の所得プラス青色事業専従者給与の合計額で法人化
の有利不利を検討します。

あとは、一人会社の法人化の場合と同様、社会保険
の加入による保険料の負担増をどのように考えるか、
という問題に尽きると思います。

法人化のご相談も受け付けております

屋税理士事務所では、個人事業主様の法人化のご相談を受け付けております。

また、法人設立手続きも行っております。

最近では、建設業やイベント業の個人事業主様からお問い合わせいただくことが多く、
法人化をお手伝いしたり、総合的に考え、法人化せずに、顧問契約を結ぶこともあります。

ご相談は、問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

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