役員報酬とは
役員報酬と経費
会社は役員に対して役員報酬を支払います。
その役員報酬は、会社が自由に決めて良いことになっています。
しかし、税務上では、一定の条件に当てはまる役員報酬のみ
経費として認められることになっています。
その理由は、役員報酬を変更することによって、
会社の利益を調整することを防止するためです。
経費として認められない役員報酬とは
税務上、会社の経費にならないと判断された役員報酬が
どのように取り扱われるかというと、以下のようになります。
1.会社の経費にならないため、会社の利益が増える。
結果として、会社の法人税が増えます。
2.支払われた役員報酬は、役員個人の収入になるため、
役員に所得税や住民税が課税されます。
このように、役員報酬が税務上の経費にならないと判断された場合には、
会社と役員個人の両方にダブルで税金が課税されてしまいます。
役員報酬の金額を変更する場合は、この点に注意して
変更するようにしましょう。
経費として認められる役員報酬とは
では、どのような役員報酬であれば税務上の経費として
認められるのでしょうか。
税務上の経費として認められる役員報酬は
次の3つしかありません。
①定期同額役員報酬
1ヶ月以下の一定の期間ごとに支給する役員報酬で、
毎月の支給額が同じ額である役員報酬を言います。
(たとえば、6月~翌年の5月までの1年間、月額50万円ずつ支給)
②事前確定届出役員報酬
あらかじめ税務署に届出ておいた金額を所定の時期
(たとえば、6月と12月に100万円ずつ支給)に支給する
役員報酬で、その定めに基づいて支給する役員報酬のこと。
役員に賞与的な支給を行いたい場合などに、
事前確定届出役員報酬として定めておきます。
③利益連動型役員報酬
会社の利益に連動して支払う役員報酬です。
しかし、対象となる法人が上場会社等の大企業に限定されているため、
一般の中小企業では認められていません。
もちろん、①と②を組み合わせたりして
役員報酬を設定することも可能です。
①の定期同額役員報酬は、ほぼ全ての会社が採用している最も一般的な役員報酬です。
今回はこの定期同額役員報酬の変更についてみていきたいと思います。
役員報酬の変更時期
既に書きましたように、税務上では一定の条件に当てはまる
役員報酬のみ経費として認められることとなっています。
その条件に当てはまる定期同額役員報酬は、
原則として期中に金額を変更することができません。
この場合の期中というのは、ある定時株主総会から
次の定時株主総会までの間という意味です。
もし期中に定期同額役員報酬を変更すると、
変更した部分の金額が経費として認められなくなってしまいます。
たとえば、3月決算の会社であれば、株主総会は通常5月中頃に開かれます。
役員報酬の変更は株主総会の翌月からという会社がほとんどですので、
6月支給分の役員報酬から金額変更するということになります。
つまり、役員報酬の変更は、通常、会社の決算月の
3ヶ月後の支給分からということになります。
そして、6月から支給を開始した役員報酬は、
翌年の5月までの1年間変更してはいけないということです。
たとえば、6月から月額50万円で支給を開始した役員報酬を、
8月に月額80万円に増額変更した場合、
8月~翌年5月までの300万円(変更月額30万円×10ヶ月)は
会社の経費として認められなくなります。
同様に、6月から月額50万円で支給を開始した役員報酬を、
8月に月額30万円に減額変更した場合、
6月~7月に支給していた月額50万円のうち減額変更後との
差額40万円(変更月額20万円×2ヶ月)は会社の経費として
認められなくなります。
しかし、会社の利益調整を防止するためとはいえ、
期中の役員報酬の変更が全て認められないとすると、
不都合な場合が発生するため、利益調整の恐れが無い場合に限って
期中での役員報酬の変更が認められています。
役員報酬の期中変更
役員報酬の期中での変更が認められるケースは、以下のような場合です。
役員区分の変更時
取締役から代表取締役への変更等、
役員としての区分が変更になったことによる役員報酬の変更。
役員の業務遂行が不可能な場合
役員が怪我や病気のため業務を行うことができなくなったため、
その業務を行うことができなくなった期間の役員報酬を減額変更した場合。
法令違反
社員や会社の法令違反等があり、その責任を取る形で役員報酬を減額
変更する場合。
会社の合併や分割
会社が合併や分割を行った場合で、
その会社の両方から役員報酬の支給を受けている場合。
業績の著しい悪化
会社の業績が著しく悪化したことにより、
第三者(株主や銀行、取引先、等)との関係上、役員報酬を減額変更せざる
を得ない場合。
期中変更時の注意
上記の5つのケースに当てはまる場合、役員報酬の変更は可能ですが、
その変更の原因となった理由を後々説明できるように、
株主総会議事録や取締役会議事録を準備しておきましょう。
また、「会社の業績が著しく悪化したこと」を理由とする
役員報酬の減額変更は、第三者である株主や銀行、取引先、等との関係で
役員報酬を変更したということがわかるような書類を何か準備しておきましょう。
いずれにしろ、役員報酬の変更は一歩間違えると経費として
認められなくなりますので慎重に行いましょう。
役員報酬についての関連記事:
「経営者の節税対策~節税セミナーに行く前に!基本の節税方法を確認しよう」